(1)オンラインショッピングの現状について【トム佐藤氏講演録】

オンラインショッピングの現状について
 講演「だからオンラインショッピングで成功した」
 講師:バーゲンアメリカ社 CEOトム佐藤(佐藤俊之)氏
講師経歴
トム佐藤(佐藤俊之)氏 1960年大阪生まれ。中学生の時に渡英。81年ロンドン大学卒業(天文学、
物理学専攻)。同年、MSX(ゲーム機)向けソフト開発会社を設立。85年に マイクロソフト(英国)に入社。その後、マイクロソフトの日本法人設立ととも
に日本へ移籍。Windows3.0の製品マネージャーとして、コンピュータ会社に対 するOEMライセンスを担当。

 90年退社し、日本マーケットに参入しようとする海外企業のための国際貿易 コンサルタントとして独立。日本でのビジネスサポートをする。

 1955年10月、アメリカで日本向けのインターネットショッピング・ビジ ネスを行うBargain America社を設立。同社CEO(最高経営責任者)。

 著書に「だからアメリカで起業した インターネットショップバーゲンアメリカ奮闘記」(日本経済新聞社)電子商取引分野における先進的成功者として日本
国内での講演実績も多い。

▼バーゲンアメリカ社について
 バーゲンアメリカはインターネットの中にあるショッピングモール(商店街)であるが、信頼できるアメリカのオンラインショップを探し求める日本の消費者と、彼らに対して販促活動をしたい直販会社を直結するため、日本に出荷できることを前提に、テナント店舗と契約をしていることに特徴を持つ。
 各店舗のバーゲン情報やアメリカのトレンド最新情報を週刊で電子メール配信する「バーゲンアメリカ・マガジン」をはじめ、カタログ・リクエスト・システム、ジャパン・カタログ・エクスプレス等のサービスを行っている。

◆企業データ
本社所在地: 4010
Moorpark Ave. Suite 219, San Jose, CA 95117
  Tel: 408-260-2985 Fax:
408-260-2497
創立: 1995年10月
経営者: トム・サトウ(CEO、最高執行責任者)
  ランディ・ライジンガー(COO、最高運営責任者)

▼講演内容
(ア)バーゲンアメリカ社の業務内容
  ・ビジネスとしては、次の3つを実施。
(1)オンラインショッピング
   →日本を中心に世界へ向けてアメリカの商品を販売
(2)インターネットマーケティング
   →アメリカから商品を買う際には、カタログを手に入れるのが難しいので、
    それを行うサービス。
(3)電子メールマガジン発行
   →インターネット上のビジネスでも営業に係る経費が大きい。

 どうにもお金がかかって仕方がないことから開始したのがメールマガジン。
今でこそポピュラーだが,当時はほとんど例がなかった。

   
(イ)インターネットビジネスで重要なこと
  ・インターネットではスピードが大切
 →トレンドや技術がどんどん進化していくのでそれに対応していくこと。
・インターネットは自動販売機ではない
 →インターネット上でモノを売るのは、一般のリテール産業と同様。
  一般の商店と全く変わらない。イベントを打ったり、
  宣伝したりしないとお客は来ない。
   
(ウ)バーゲンアメリカでのインターネットビジネスの方法
  (1)オープン懸賞システム
  入力操作に慣れていないユーザーに全部入力しなさいというのは無理。
  懸賞コーナーに応募してもらっているうちにデータの入力に慣れ、
  1?2ヶ月くらいたつと買ってみようかなという気になることをねらっている。
(2)独自の即日出荷システム
  日本のお客にも2?3日で届くシステム。
  流通経路に近いところに出荷部門を。
(3)日本人サポートスタッフを配置
  3名雇用し、顧客からのメールに迅速に応える。
   
(エ)マーケティングコスト削減のためのメールマガジン
  (1)マーケティングコスト
 インターネットビジネスで最もコストがかかるのがマーケティング。
 有名な アマゾン・ドット・コムでも売上げの50?70%もかけている。

 メールマガジンは、 その解決策である。

(2)メールマガジンビジネスの利点

印刷代不要。切手代不要。テキストのままでいい。
すぐ発送でき、すぐ届く。確実に読まれる。
  日本のユーザーには適している。(通信コスト高から思ったほどネットサーフィンしないのが日本のインターネットユーザーの特徴。メールはその点コスト安)
  バーゲンアメリカでは購読者5万人で、1号あたりの製作費は1万5000円。
商品の掲載だけでは面白くないので読まれない。コラムを書いて読み物として読んでもらえる内容にする。読者の人からネタが来るような軽い話を中心に。
こうすれば確実にメールマガジンは読まれる。
   
(オ)なぜバーゲンアメリカは日本企業でなく、アメリカ企業なのか
 
アメリカでベンチャー企業が成長するのは、エクイティファイナンス制度、従業員の自社株購入権のストックオプション制度があるのがポイント。
現在、EC関連の株式は100件くらいあり、赤字なのにもかかわらず、急成長すると見れば資金が集まってくる。日本ではお金を集めるのが難しい。
  シリコンバレーへは全米から資金が集まってきている。10件に1つか二つ成功すれば、莫大な利益が得られる。

質疑応答

Q:

日本では行政がベンチャーにお金を貸そうとしているがはかばかしくない。いったい どこが違うのか。また、佐藤氏はなぜ銀行でお金を借りないのか。
A:  アメリカでも銀行はベンチャー企業には金は貸さない。日本と同じである。その代わり にエクイティファイナンスをやるのである。

 ここでは、10件のうち2件程度上場すればもとが取れるようにできている。リスク をかけているから、真剣に取り組む。

 出資者はコンサルティングをやったり、取締役になったりして、成功のためにノウハウを提供し、いっしょに事業を行う。
 NASDAQ市場は創業後半年?1年でも公開できる。日本では創業後20?29年と言われている。企業を大きく成長させ、株を売れば、儲けが取れる。
   

Q:

日本は不況のどん底にあるが、アメリカが立ち直れたのはなぜだと考えるか。
A:  米国が不況であえいでいた頃、ゴア副大統領を中心とした情報スーパーハイウェイ構想が出てきた。電話会社、通信回線会社の垣根を取り払い、通信の自由化を行った。そこにビジネスチャンスを見いだした人たちがシリコンバレーで事業を立ち上げていった。その発展にベンチャーキャピタルが加わり、資金が集まるようになった。
 アメリカには「起業の権利」という考え方がある。金がなくても会社は興せる。日本だと 株式会社で資本金1000万というようなハードルが最初からある。だから、技術を
持ちながら、不況で失業したような人たちがビジネスをはじめられた。自由競争の社会にならないと経済は生きてこない。
   

Q:

日本のインターネット市場は今後も大きく伸びるか。
A: 二つの難点を克服していく必要がある。まず、接続が簡単になること。次に、電話料金の高さが改善されること。
   

Q:

即日決済をしているということだが、方法は?
A: クレジットカードを利用する。アメリカではクレジットカードは企業負担の手数料2%、即日決済、翌日入金である。日本では、手数料が6%、月末入金と差がありすぎる。
日本でのカードでのビジネスはあまりに不利である。

前の記事

平成7年度事業実績