(3)統合業務パッケージ(ERP)の現状について【HCLテクノロジー社訪問記録】

統合業務パッケージ(ERP)の現状について HCLテクノロジー社訪問記録
訪問先: HCL Technologies
America Inc.
  330 Potrero Avenue,
Sunnyvale, CA 94086

Tel: 408-733-0480 Fax: 408-733-0482
応対者: Mr. Surendra Saxena(Area
Sales Director)

Mr. Surendra Saxena
▼企業の概要
 HCLテクノロジー・アメリカ社は、インド最大の情報系コングロマリットHCLグループのアメリカ法人である。同社はもともとHCLグループの研究開発部門としてスタートしたが、現在は、テクノロジー部門、アプリケーション部門、テレコミュニケーション部門に分かれ、ソフト開発からハードウエアのデザイン等幅広い事業を行っている。同社の日本法人「HCLテクノロジーズ・ジャパン」は、岐阜県内への拠点設置を計画中で、ソフトピアジャパン内に仮オフィスを置いている。

◆企業データ
本社所在地: カリフォルニア州サニーベイル ポトレロアベニュー330
創立: 1976年
社員数: 8800名(グループ全体)
売上高: 約700億円(グループ全体)
支社: インド国内88カ所、海外オフィス:27カ所

▼説明内容
(ア)HCLテクノロジー・アメリカ社の概要
 
1989年創立。600名以上のフルタイム職員をもち、売上げは年間9200万 ドル(約110億円)。年間約50%の成長を遂げている。オフショア開発を行っており、6年おきに10倍に成長。6年のマジックと呼ばれ、ハーバードの
ビジネススクールでも研究事例に取り上げられた。
シリコンバレーでの顧客は、サン、オラクル、シスコ、ジェームスマーティンなどもある。
   
(イ)ERP普及の背景
 
サービス業界はどうやって顧客に付加価値を提供していくのかという点で、大きな変化が起こっている。インターネット上の商取引などを通じて、お客自身が商品選択の決定権
をもつようになってきた。
新しい企業のあり方として、会社の各部門ごとにポータル(入口)をもつことが模索され、 そのためにビジネスプロセスの変革やアウトソーシングなどを実施しつつある。
   
(ウ)アメリカでのERP関係企業
 
ベンダーを決める際に、企業の得意分野とビジネスニーズに合わせてベンダーを選ぶようになってきた。
   
(エ)HCLの取り扱うSAPと導入
 
HCLが取り扱っているSAPの領域は次の業種である。ハイテク、エレクトロニクス、化学、石油、ガス、自動車メーカー、建設、金融
HCLはSAPの公認パートナーとしてSAPプロジェクトに取り組んでいる。
SAP導入の実行にあたっては、プロジェクトマネージャー、コンサルタント、機能別コンサルテーション、プログラマーといった人をプロジェクトチームとして配置している。
現在、HCLが抱えるSAPコンサルタントは400名以上。
HCLが関わって導入を行い、成功している企業としては、ロックウエル・コリンズジェネラルモータース、サムソンなどがある。
HCLではインドへの「オフソーシング」といわれる事業形態をもつ。現地で仕事をするインドの職員を通じ、海外を拠点に行う作業の組み合わせ。40%程度、経費を切り下げられる。

質疑応答

Q:

ERP導入の失敗例とその原因について教えてほしい。
A: 失敗するケースももちろんある。中にはそれが原因で倒産するところもある。 コックスマニアという企業が年間10億ドルもの売上げがあったが、ERP投資で失敗して
倒産した。ここの場合は、トランザクションボリュームの処理に問題があったのと、導入を急ぎすぎたのが問題であった。
 一般的に、失敗するケースは、既に会社経営自体が失敗していて、それを改革する手段 として、あわててERPの一部を導入しようとする場合が多い。また、情報を蓄えておける
ような知識データベースのなさもある。
 短期間で導入しようとするのは無理。時間をかけてどこが問題なのかを洗い出し、変えたい 組織構造を考えていくという作業がいる。

 新しい技術を導入しようとするときは、まず自分の中を見て、固定して変えられなかった システムをフレキシブルにすることや、何をしたいのかをはっきりさせることが必要。
   

Q:

御社もそうだが、インド企業がアメリカで発展しているという話をよく聞く。何がその素地にあるのか。
A: インドでは、公務員や公職が昔から一番人気のある職業で、続いて土木工学、建設業の エンジニア、電気工学、コンピュータサイエンスのエンジニアと続いている。このうち、
コンピュータを学ぶのは最もコストがかからない。
 インドでは、インド拠点を持ったIBMに対し、1976年に政府が新機種の開発を要請 したのが情報産業が根付くようになったはじまりで、同じ頃、外資系企業の誘致を目的に、
人材育成をはじめたのがHCLの設立だった。当時は6名の社員ではじまった。
 現在は国立の教育機関で、情報のトレーニングを行っており、毎年5万5千人のエンジニアを輩出している。技術教育にフォーカスをおいた活動を行っており、同じような
研究機関が国内に150カ所ある。
 インドのエンジニアのメリットは、コスト面で安いことであるが、現在、エンジニアの給料 は高騰しつつあり、安さの強みは長くは続かないだろうと思う。ただ、リモートアウトソース
に注力し、人の多さを活かして、1週間で50名を集められるというような体制を維持することで、競争力を保っていけると考えている。
   

Q:

ERPとサプライチェーンの違いをもう一度教えてほしい。
A: ERPは前からある技術であり、SAPの成功により普及した。インターネットの普及で企業間 のビジネスの流れが変化し、ビジネス環境が変わってきたところでSCMが登場した。ビジネスのニーズが生まれてでてきたということである。

 現在は、ERPとSCMが統合する流れができてきており、i2cなどはその代表的企業である。

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