(4)シンガポール情報化事情調査【ジェトロシンガポール】

-調査結果-
シンガポール情報化事情調査
●ジェトロシンガポール
訪問先: ジェトロ・シンガポール
  16, Raffles Quay,
#38-05 Hong Leong Bldg.

Singapore 048581

Tel:+65-221-8174 Fax:+65-224-1169
対応者:

西野所長、村上氏、渡邊氏 ほか

▼アジア・シンガポール経済状況
97年頃から不況が始まり、今年4月くらいからアジア全般に、少しだけ明るさが見えてきた感がある。
97年7月の通貨危機より前の、96年ころから少しずつ陰りがでてきており、バブル崩壊があり、アジア自体で危機的状況があった。
現在アジアでもっとも危機的状況にある国としては、インドネシアがあげられる。通貨危機当初のインドネシアは、うまく金融調整がなされていたため、経済の安心感が比較的高かった。97年12月から98年1月ごろに大幅な陰りがでてきた。
このような背景の中で、シンガポール経済は比較的大きな打撃を受けることなく運営されてきた。
しかしながら、シンガポールはGDPの1.6倍が輸出に頼っているため、外的影響を大変受けやすい。
シンガポール最大の輸出相手は米国、アジア向けは50%強であるが、アジア向け輸出が急激に減少していく中で、GDPをかなり押し下げる結果となってしまった。
99年4月からアジア・アセアン諸国が上向き始めているが、数字をどう見るかが問題である。プラス成長であるといっても、最悪の状況であった前年との比較においては、対象が低すぎることが言える。
金融がうまく回っていない、不良債権の処理がうまくいってないといった状況は、依然としてアジア経済全般にいえることである。
連鎖的なタイ→マレーシア→フィリピン→韓国→インドネシアへの不況の動きは、逆に景気の上向き傾向にも見られる。投資家のなかで、心理的に「よくなるであろう」という期待感がでている。本格的な景気回復であるかは不明であるが、心理的プラスはアジア経済において大変重要な要素である。
本格景気には、不良債権処理、金融構造改革の問題解決が不可欠であるが、まだ時間がかかりそうである。

▼シンガポールにおける情報化への取り組み
(1)シンガポール政府の情報化政策
   1980年  :国家コンピュータ化計画
   1981年9月:国家コンピュータ庁設立
   1985年  :国家IT計画
   1992年  :IT2000計画
   1996年6月:シンガポール・ワン計画発表
         ↓
   1999年6月:ICT21マスタープランの策定を発表(策定中)
        (2010年までの新国家ITマスタープラン)

   

●a)IT2000マスタープラン
目標:シンガポールをインテリジェントアイランドに
 ?シンガポールを情報の世界的なハブとする。
 ?社会生活のあらゆる側面(職場、家庭、娯楽)にITを採用し、
  国民生活の質的向上を図る。
ITマスタープランでは、その導入当初から国民の目で見える形で施策を実施。
具体的には、電子マネーであるキャッシュカードの導入、高速道路等における電子課金方式(ERP:Electronic
Road Pricing)等を導入してきた。
国民の理解とITの発展が密接に関係している。
ICT21マスタープランの策定へ。
行政サービス
 ?2001年までに全ての行政サービスをオンライン化
 ・政府全体のホームページ(www.gov.sg
 ・E-citizenセンターを1999年4月にウェブ上に設置。
  (www.ectizen.gov.sg
  ?行政サービス情報やオンラインサービスを実施
  ?11政府機関のサービス及び出版物販売、交通警察による
  運転免許試験の期日予約、交通渋滞情報のリアルタイム提供、
  政府に対する補助金申請書の送付
  (CITREP Program)等が既にオンラインで可能
行政側の電子化
 ?SG-NETという政府ネットワークが1996年に設立され約100の
  政府及び関連機関が接続され、外部データベースとも接続され
  ている。
 ?官庁電子メール・システム(14省庁、27,000名)
   
●b)シンガポール・ワン計画www.s-one.gov.sg
?1996年6月:シンガポール・ワン計画正式発表
 ・Singapore One(One for Network Everyone)

<目標>
 ?全国民にマルチメディアサービスの恩恵を与える
 ?マルチメディア産業を発展させ、シンガポールをマルチメディアセンターと位置づける
 ?シンガポールをマルチメディア開発の革新の場として位置づける
?1998年7月:シンガポール・ワンの商用化を発表
?現 状
   加入者数6万人(1999年6月現在)
   目標値 1999年末:10万人→2001年:40万人
   →課題:一般家庭で使われるようなアプリケーションが少ない。
      :企業ではE-コマース関連のアプリケーションの充実が期待される。
?実用化が進むSingapore ONE

 ・「Live On Demand(LOD)」プロ野球中継(日本テレビより)

  →やや高価。
 ・「Hotel Net」ホテル客室に専用パソコン(NECより)

?シンガポールのIT専門家の育成策
 ・IT技術者認定試験の創設
 ・IT関連研修費用の一部を補助する制度
 ・大学、高専からの専門家の輩出

(2)シンガポールのIT産業
   ・1997年(対前年比32.3%増)
   ・119.5億$ドル
    のうち ハードウェア92.6億$ドル(77.5%)

       ITサービス15.7億$ドル(13.1%)
       ソフトウェア11.2億$ドル(9.4%)

(3)シンガポールの積極的な電子商取引(EC)関連ルール作り

1998年4月:「政府電子商取引政策委員会による電子商取引の政策枠組み」を発表。
1998年7月:「電子商取引法(ETA:Electronic Transaction Act)」の公布:電子文書及び電子署名の有効性、ネットワークサービスプロバイダーの責任規定、ネットワーク契約書の有効性、認証局規定等々
1998年9月:「電子商取引マスタープランの宣言開始」
2003年には、40億$ドルへ。(1998年:2億ドル)
1999年2月:「電子商取引(認証局Certification authrity)規則の公布」:ライセンス制となった認証局の申請手続き、審査基準等が明確化
CA:Certification Authority(認証局)サービスの開始

シンガポールにおける政府系認証局としてNETRUST社が1997年半ばに設立。
顧問:ISP、金融、政府部門である。最終ユーザー・ベースでは80,000人。
年間6$ドル。
現実には、五感で商品を購入することが多いため普及にはまだ時間がかかりそうである。


(4)シンガポールでのインターネットの動向

   インターネットユーザー数<出所:TAS>
     1996年       97,000
     1997年12月末    167,400

     1998年12月末    393,600

     1999年 3月末    426,800

     1999年 8月末    480,600

(5)シンガポールの有名アプリケーション
 1.PSA Corporation Ltd.(シンガポール港湾会社)の情報システム

地理的優位性、土・日曜も稼働する良好な労使関係(授業員7,000人)、コンテナ化に特化した設備、情報化による効率化により、アジアのハブ化。
PSA(Port of Singapore Authority)は、1997年10月1日民営化。1997年売上げは対前年比3.8%増の19億7200万$ドル。うち7割がターミナル運営収入。3割は倉庫等の収入。
1997年の貨物取扱量は、1412万TEUs(twenty-Foot Equivalent Units)。処理能力としては1800万TEUs。30%が国内向け。70%が積み替え需要。
通関手続き:税関と密接な関係にありEDIを活用することにより、通関手続きを効率的に実施。通関の承認は、電子申請が1日24時間可であり、承認は申請後15秒?20秒とする予定。(現在1分?3分程度)
最短コンテナ積み替え時間(Transit Time)は、1時間
情報システム:約200の応用ソフトウェアを開発。数百人の情報担当者が従事。一個一個のコンテナ全てをコンピュータ制御。一個のコンテナは平均3日間、港に停留。港敷地内に積み上げる場合にも、不安定にならないように各コンテナの重さをも考慮してコンピュータ制御。コンテナ取扱プランニングを情報化。船の入港以前にコンテナの取扱プランニングを実施。入港48時間以前に海上の船舶からPSAに対し各コンテナの行き先等の必要情報を連絡し、事前に着眼パース
を決定する。1パースに4?5台のクレーンを同時に稼働。コンテナ満載の船が積み荷を下ろし、かつ、満載に積み荷を積んで出港するまでの平均時間は、11時間。1時間に平均88個のコンテナを積み下ろしている。最高1時間229個のコンテナを処理した世界記録をPSAで有している。コンテナを運ぶ大型トラックは、港湾入り口で車番号自動認識装置により認識され、コンピュータにより30秒以内に運転手が持つポケベルを通して目標パースを指定される。

 2.シンガポールにおける道路交通管理システム
   ・1995.9:LTAA(陸上交通庁)設立
   ・四輪登録台数:55万台(1997年)
   ・中型乗用車の平均価格129,200Sドル(1994年)
   ・1975.6 区域通行許可制度
   ・1990:車両購入権制度→投資対象にもなっている。
   ・1998.9:電子式道路料金徴収システムの導入
    (ERP:Electric Road Pricing System)

     ガントレー(34カ所)、不正発見カメラ、車載ユニット、キャッシュカード
   →渋滞緩和、自動車制限の実現を図る。

 3.シンガポールの電子図書館システム

1 シンガポールの図書館の整備
 シンガポール国立図書館(15箇所のコミュニティ図書館、38箇所の児童図書館を含む)及び国立大学(2校)内の図書館Nang
Yang Technological University Library、Polytechnic(4校)の図書館等があり、「書籍カタログ検索システム」等積極的な情報システム化に努めている。
1-1 図書館2000計画
 過去、シンガポールにおける図書館利用者は全人口の12%程度と言われ低い利用率に留まっていたが、情報技術(Information
Technology:IT)の発展により、ITを利用した図書館の今後のあり方について、1994年に「図書館2000年計画」を取りまとめた。
1-2 図書館2000年計画の戦略的目標
 ・公的図書館システムの設立(合計120カ所以上)
 ・国際図書館ネットワーク(海外図書館やデータベースとの接続)
 ・国家蔵書収集戦略(中国語、マレー語、タミル語に関する蔵書の購入等)
 ・サービスの質的向上(有償付加価値サービス範囲の拡大等)
 ・企業及び地域社会とのリンク(コミュニティ図書館の実現)
 ・国際知識社会の中心として(シンガポールのワンストップ地域情報センター化)
1-3 TiARAプロジェクト
 TiARA(Timely Information for All,Relevant and Affordable)プロジェクトは、NCB(National
Computer Board)、NSTB(National Science and Technology Board)、NLB(National
Library Board)及び関連図書館参加者の共同プロジェクト。

 シンガポールにおける政府機関や教育機関の図書館をネットワーク接続し、インターネット・ウェブサイトを通じて、ワンストップ・サービスを提供している。シンガポールを代表する先進国図書館ネットワーク・サービス・システム。シンガポール国内の15図書館のデータベースが接続されており、ユーザー数10,000名以上。
 接続されている15図書館の書誌カタログデータベースが一度に検索可能。今後のサービス向上策としては、現在カタログ検索に留まっている機能を拡充し、蔵書の貸出予約やデリバリーサービス等も、まもなくサービス開始予定。

 4.シンガポールにおける道路交通管理システム
 シンガポールITの発展
 ・明確なビジョンと具体的施策の連携が国民の目に見える形で実行され、国内企業・外国企業の利益となるようにIT産業・市場の発展が図られている。

(参考)(財)国際情報化協力センター・シンガポールオフィスホームページ
     http://www.cicc.org.sg

▼質疑応答

Q:

シンガポールはかなりインフラ整備が進んでいるが、資金はすべて国が出しているのか。企業からのバックアップはあるのか。
A: すべて国が主導で資金を出している。企業からの資金提供は耳にしていない。技術面などは企業の力と言える。人口・資源の少ない国において、外国に頼らざるを得ない状況がある。労力をみて効率よくITを導入する必要がある。これらは、ITのみならず、あらゆるサービスを国際的サービス産業として向上させることが大切である。
   

Q:

ERPの車載資金は個人で出されたものなのか。
A: 個人で払っている。無料期間を決めて一気に転換を図った。通行料金は、3ヶ月に1度の頻度で見直しをしており、また30分単位で価格が異なる。これにより時間ごとに交通量の調整を図ることができる。最終的には、地下鉄のないところにも路線を延ばし、車がいらない社会を目指したいと 考えている。

(参考)1.5Lクラスのセダンで約700万円。

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