(ア)アメリカにおけるインキュベーションビジネスについて |
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インキュベーションビジネスの目的は、オフィスの提供、会議室、レセプショニストの共有、専門知識の提供といったところにある。 |
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アメリカのインキュベーションビジネスは、都市や地方自治体が中心になって運営しており、約90%が非営利団体(NPO)である。連邦は財源の支援をするケースはあるが、連邦主導のものはない。 |
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地方や都市がインキュベーションビジネスに取り組む理由は、新しい産業が出来上がり、雇用や人口も増え、自治体の税収もあがるからである。 |
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アメリカのインキュベーターは、日本のように通産省がやれといってやっているわけではない。政府、企業、個人、大学といった期間が集まって、資金を調達して運営している。いわば草の根的存在である。 |
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アート、美術、芸術のインキュベーションビジネスも育っている。 |
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(イ)サンノゼのインキュベーターについて |
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サンノゼ市には10件のインキュベーターがある。内容はソフトウエア企業向け、環境ビジネス向け、マイノリティ(少数民族)向け、低所得者向けなどに分かれている。NASAが支援するインキュベータは、このうち8件。さらに、サンノゼ州立大学が学校・大学院と地域の情報産業をネットワークでつなぐ「バーチャル・インキュベーター」を運営している。 |
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(ウ)サンノゼ市のソフト産業振興施策 |
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10年前あたりまでに、サンノゼ市の周辺地区は発展拡大してきたが、ダウンタウンはひっそりとしていく傾向にあった。そこで、市は中心部の地盤沈下をさけ、ハイテク産業を市内に根付かせるための施策に乗り出した。 |
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市が踏んだプロセスは次の3段階である。
(1)中核企業となりうるアドビの社屋建設工事費を市が補助。
(2)様々なプラットフォームや機器に対応したソフトウエア・テストセンターを設置。 (3)ソフトウエア・インキュベーター(ソフトウエア・ビジネスクラスター)の設置
→市がオフィスの家賃を提供、スタッフの雇用、会員企業の誘致を行う。入居期限は2年。
→(成果)これまでに60社が卒業(うち79%がダウンタウンに定着)
90%が売上げ増
800名の新規雇用を創出
ベンチャーキャピタルの総投資額は1億5千万ドル |
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市ではこの成果に満足し、他の業種もインキュベーターに入れるよう範囲を拡大。多業種部分は、環境保護団体や州立大学が運営し。企業がスポンサーになっている。 |
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この段階で、現在のIBIディレクターのバーバラ女史が海外のベンチャー企業向けのインキュベーター設立を提言したが、市は税金を使って、アメリカ人の仕事を奪うような海外の企業を支援する必要はないという理由で否定的であった。 |
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バーバラ女史はこれを説得し、併せて、海外企業の進出が地域活性化に役立つという主張に賛同してくれる企業を探し、これに応じてくれたカリフォルニアの電力会社から資金援助をうけ、現在のIBIが設置された。 |
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(エ)IBIについて |
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IBIには現在、15カ国28企業が入居している。 |
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職員はフルタイム職員が4名、研修生等としてやってくる大学生やインターンが6?8名いる。他にも企業から専門家がボランティアとしてやってくることもある。 |
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入居にかかる家賃は1名?3名規模の大きさのオフィスで、月600?1200ドル。このほかに、インキュベータへの参加費用(内容は弁護士料、会計費用、ビザ手続料等)がかかる。 |
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(オ)インキュベータディレクターの役割について |
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バーバラ女史がIBIをはじめた頃、自身、ソフトウエア産業に関する知識はほとんどなかった。しかし、それまでバーバラ女史は、インキュベーターを5件てがけた経験があり、企業が事業をおこすことの難しさや、起業する際に何を知らなければならないかということを知っていた。 |
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バーバラ女史が考えるインキュベーターディレクターの資質は次の6点である。
(1)共同作業を起こすときのチーム作りができること
(2)人間的に忍耐力をもっていること
(3)企業に行ってお金を集めたり、借りたりすることができるような政治的センス、手腕があること
(4)お金集め等にあたっての人とのコミュニケーションスキルを持ち合わせたいいセールスマンであること
(5)技術的知識やビジネスの仕組みを知っており、仕事の仲介、人の紹介等ができる能力があること。
(6)4?5つの複数の仕事を同時にこなすことができるようなエネルギーあふれる人。 |
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ただし、これらの資質を全て兼ね備えた人を探すのは大変難しい。それぞれの専門の人を雇うのも方法である。 |
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